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きぃすとんは、ロープ高所作業のリーディングカンパニーです。

【IRATA技術】は、『2本確保』★【SORAT技術】は、『2点確保』

2本確保」と「2点確保」の違い

きぃすとんでは長年、ロープアクセス技術を使って、高所・難所、とりわけ橋梁などのインフラ点検に携わってきました。その経験から見ると、IRATA技術とSORAT技術には、安全確保の考え方と移動方法に大きな違いがあります。

IRATA技術は「2本確保」、SORAT技術は「2点確保」。この違いを理解すると、それぞれの技術の特徴がかなり見えやすくなります。

IRATA技術は「2本確保」

IRATA技術では、メインロープとバックアップロープ、いわゆるセーフティラインの2本のロープで安全を確保します。

メインロープによる安全確保が何らかの理由で失われた場合でも、もう1本のロープが残っているので墜落しない、という仕組みです。

この「2本確保」では、移動方向は上下にほぼ限定されます。上下以外の方向へ移動しようとすると、メインロープだけでなく、バックアップロープでも安全を確保した状態を維持しなければならず、横方向や斜め方向への移動が難しくなります。

そのため、移動方向という観点で見ると、IRATA技術は1次元ロープアクセス技術、あるいは1.5次元ロープアクセス技術に分類できると考えています。

既存のロープアクセス技術の多くも同様で、日本の法面工事などで使われている親綱・ロリップ技術や、ビル外壁クリーニングのロープ技術も、基本的には上下方向への移動を主体とした1次元ロープアクセス技術です。

「2本確保」はロープ技術として比較的シンプルで、習得しやすいことも特徴です。そのため世界的に普及が進んだのだと思います。

IRATA技術では、講習5日間で検定に合格すればレベルⅠとなり、上級者が設置したロープを使用してロープアクセス、主に上下移動を行うことができます。

では、なぜ移動方向が上下にほぼ限定されるのでしょうか。

そもそもIRATA技術が生まれた背景を考えると、上下移動ができれば目的を達成できる現場が多かったのだと思います。建設現場では、高所や難所、いわゆるInaccessibleな作業箇所へロープ技術で下降してアクセスし、そこで作業を行い、作業が終わればロープ技術で登り返して戻る。このような使い方が求められてきました。

建設作業では、それで十分に役割を果たせる現場が数多くあります。

インフラ点検では事情が違う

一方、インフラ点検では事情が変わります。

橋梁などの構造物では、点検する場所が上下方向の一直線上に並んでいるわけではありません。橋桁の下面から側面へ移動し、さらに別の部材へ回り込みながら、構造物全体を三次元的に移動する必要があります。

しかも、単にその場所へ到達すればよいわけではありません。高所・難所にある点検必要箇所を次々に移動しながら、近接目視や直接観察によって損傷を確認し、必要に応じて計測し、その場で記録していきます。

このようなインフラ点検では、IRATA技術のような上下移動主体のロープアクセスでは対応しにくい場面が出てきます。三次元的に、しかも迅速に移動する必要があるからです。

また、インフラ点検では、ロープユーザー自身が単なる建設作業員、Technicianではなく、点検技術者、Engineerであることも重要です。

海外の現場を見ていると、ロープユーザーとして実際の点検作業に携わるのはTechnicianであり、Engineerはロープアクセスを行わない、という風潮や慣習があるようにも感じます。

以前、オーストラリアのロープアクセス企業の経営者に「インフラ点検はどうやっているのですか」と尋ねたことがあります。そのときには、ロープユーザーであるTechnicianがビデオや写真を撮影してきて、Engineerが室内で解析している、という話を聞きました。

日本のインフラ点検とは、考え方そのものがかなり違います。

世界のインフラ点検現場で、現在ロープアクセス技術がどのように使われているのか。IRATA技術をはじめとする1次元ロープアクセス技術が、三次元ロープアクセス技術へ進化しているのか。それとも、TechnicianとEngineerを分業する方向へ進んでいるのか。非常に興味のあるところです。

SORAT技術は「2点確保」

SORAT技術では、「2点確保」という考え方を基本としています。

1本のロープ、つまりメインロープを2か所の支点で支えて安全を確保します。この2か所の支点は、それぞれ異なる堅固な支持物に設置します。

2か所の支点のうち、1点での支持が何らかの理由で失われた場合でも、もう1点が残っているため、ロープユーザーは墜落しません。

SORATでいう「支点」とは、ロープを固定する対象のことです。

この2点確保を使うことで、SORATでは上下だけでなく、前後左右へ三次元的に移動することができます。

たとえば、現在A点とB点の2か所の支点で安全を確保しているとします。ここからC方向へ移動する場合には、まずC点に新しい支点を設けます。一時的にA、B、Cの3点で確保した状態をつくり、その後、後方のA点での確保を解除します。するとB点とC点による新しい2点確保の状態となり、ロープユーザーはC方向へ移動できます。

このように、移動したい方向へ支点を順次移し替えていくことで、上下だけではなく、前後左右へ三次元的に移動していきます。

しかも、この移動は極めて迅速です。

「2点確保」という考え方

SORATの「2点確保」は、「2本確保」を包含し、さらにその考え方を拡張したものだと考えています。

SORATでも、建築物の補修など、点検・調査以外の作業では2本のロープを使う場合があります。

一方、IRATA技術では、SORATでいう「2点確保」という考え方は基本的にはありません。ロープが2本あることで安全を確保するという考え方が中心です。

SORATでは、ロープの本数だけを見るのではなく、そのロープをどこで、どのように支持しているのかを非常に重視します。

2か所の支点については、それぞれ仮荷重テストと作動チェックを行い、両方の支点が確実に機能することを確認したうえで使用します。また、支点そのものが破壊される可能性も想定しています。

こうした考え方を前提に、安全を確保しながら支点を移し替え、三次元的に移動していくのがSORATです。

3次元ロープアクセス技術SORAT

SORATは、移動方向が上下だけに限定されず、三次元的に自由に移動できるため、3次元ロープアクセス技術に分類できます。

体系的に確立した3次元ロープアクセス技術としては、SORATは、私たちが知る限り世界最新・最先端であり、世界オンリーワンの技術だと考えています。

日本国内ではインフラ点検のニーズが高まっており、高所・難所で三次元的な移動が必要になる現場では、SORATが大きな力を発揮しています。

国内にはSORATを模したような技術もあるようですが、実際の現場での移動性能や運用を見ると、パフォーマンスには明らかな差があると感じています。

SORAT技術者は現在約60名で、きぃすとんに所属する正社員を中心に、技術の維持、発展、共有を続けています。

「2点確保」という基本的な考え方や、そこで使うロープ技術自体は、それほど複雑なものではありません。しかし、実際の現場で使いこなすには、ある程度の実戦経験が必要です。

構造物のどこに支点を設けるのか、次にどこへ移動するのか、そのとき荷重がどの方向へかかるのかを判断しながら、安全確保を切らさずに支点を移し替えていかなければなりません。

この習熟に一定の経験を必要とすることが、SORAT普及の障壁の一つにもなっています。

SORATがインフラ点検のために発展してきた理由

高所・難所のインフラ点検では、いたるところに存在する点検必要箇所を、次々に三次元移動しながら確認していく必要があります。

技術者自身が構造物へ接近し、近接目視や直接観察によって損傷を確認し、必要に応じて計測し、その場で記録していきます。

このような点検を効率よく行うためには、ロープユーザー自身が構造物の中を自由に移動できなければなりません。

そのために開発されてきたのが、3次元ロープアクセス技術SORATです。

SORATの大きな特徴は、三次元的に自由に移動できることと、その移動が迅速であることです。

30年以上にわたる現場運用

SORATのメインユーザーである株式会社きぃすとんでは、技術開発以来、30年以上にわたってSORATを実際の現場で使用してきました。その間、おかげさまで無事故を継続しています。

SORATでは、支点だけでなく、使用するロープについても厳格に管理しています。

ロープは毎回、使用前に全長を手で触診し、撤収時にも再び全長を触診します。また、使用開始から1年を経過したロープは廃棄しています。

SORATは、日本の安全衛生規則のもとで、実際の現場で長年にわたり運用してきた技術です。

SORAT技術者の養成が急務

現在、SORATの大きな課題の一つが、SORAT資格者、SORAT技術者の養成です。

インフラ点検の拡大にともない、高所・難所での点検ニーズも増えています。

ドローンやUAVをはじめ、さまざまな代替手法も発展していますが、技術者自身が対象物へ接近し、近接目視や直接観察を行う必要がある場面は今後も残ります。

そのような場所へ人が直接アクセスするためには、ロープアクセス技術が必要です。

インフラ点検の需要が拡大していく中で、SORATを実際の現場で使いこなせる技術者をどのように増やしていくか。これは、これから取り組まなければならない重要な課題です。

SORATの夢は世界普及

SORATの夢は、世界への普及です。

SORATは、インフラ点検など、IRATA技術では対応が難しいシチュエーションを得意としています。また、IRATA技術ではアクセスが難しい高所・難所でも、SORATであれば到達できる場所があります。

日本のインフラ点検の現場で長年使い続け、発展させてきたSORATを、世界の高所・難所でも使ってもらいたい。

世界の皆様にSORATという技術を知っていただき、その特徴と可能性を理解していただけるよう、これからも取り組んでいきます。