
ドローン・スマートフォン・3Dモデルによる高精度な損傷図作成
砂防堰堤や法面、岩壁の管理では、ひび割れや剥離、目地開きなどの変状を正確に記録し、損傷図として整理することが求められます。
しかし従来の詳細点検では、高所作業車やロープアクセスによる近接目視調査に加え、現地で野帳へスケッチを行い、事務所へ持ち帰ってCAD化する工程が必要でした。
この方法では、
- 現地での記載漏れ
- スケッチの縮尺誤差
- CAD入力時の位置ズレ
- 写真との対応付け
など、多くの手作業が発生します。
当社きぃすとんでは、SfM/MVSによる3次元モデルを活用した詳細点検手法を導入することで、これらの課題を解決し、砂防堰堤・岩壁・斜面調査をより効率的かつ高精度に実施しています。
SfM/MVSとは
SfM(Structure from Motion)は、異なる位置・角度から撮影した多数の写真からカメラ位置を推定し、対象物を三次元復元する写真測量技術です。
さらにMVS(Multi View Stereo)処理によって、
- 高密度点群
- 3Dメッシュ
- 高解像度テクスチャ
を生成し、実物に近い三次元モデルを構築します。
近年ではドローン性能やGPU性能の向上により、従来よりも短時間で高精度な3Dモデルの作成が可能となっています。
調査前に3Dモデルを構築

まず調査対象をドローンおよびスマートフォンで撮影します。
撮影時のポイントは高いオーバーラップ率(重複率)です。
十分な重複を持たせることで、
- 特徴点抽出精度
- カメラ位置推定精度
- 点群密度
- テクスチャ品質
が向上し、後工程で利用できる精度の高い3Dモデルが構築できます。図例でも、堰堤全体を高密度点群および3Dメッシュとして再現しています。
撮影したデータはすぐに、現場から当社きぃすとんのサーバーに送信します。送信にはStalink回線を活用し、山間部でも安定した通信環境を確保します。
オルソモザイク画像をリアルタイムに生成
現場から送信された撮影データは、当社サーバー上で直ちにSfM/MVS解析を開始します。解析は約10分程度で完了し、高密度点群・3Dメッシュ・高解像度テクスチャを備えた3Dモデルを構築します。
解析が完了すると、現場の調査員はタブレットやスマートフォンから3Dモデルをすぐに確認することができます。
構築した3Dモデルから、
- 堤体正面(立面)
- 天端(平面)
- 側壁
- 護岸
など任意の投影面を定義し、高精細なオルソモザイク画像を生成します。
オルソ画像はレンズ歪みやパース歪み、地形起伏が補正されているため、平面図と同様に距離や位置関係を扱うことができます。そのため、既存の一般図や2DCAD図面へ高精度に位置合わせすることが可能になります。
オルソ画像をデジタル野帳として活用
生成したオルソ画像を2D CAD図面へ位置合わせすることで、デジタル野帳として活用できます。
これにより、
- 3Dモデルとオルソ画像を見比べながら調査を進められる
- 損傷位置を現地で正確に確認できる
- 撮影漏れやモデル化範囲の不足も現場で判断できる
など、調査を進めながら必要な情報をその場で確認できるため、従来のように事務所へ戻ってから解析をはじめる必要がありません。
また、従来の紙図面と比較して、現況との一致性、視認性、損傷位置の把握が大幅に向上し、より効率的な詳細点検が可能になります。
現地では変状だけを調査する
現場では、
- ひび割れ
- 剥離
- 目地開き
- 漏水
- 洗掘
などの変状を確認し、チョーキングおよびスケールによる開口幅測定を実施します。
従来のように複雑なスケッチを作成する必要がないため、点検者は変状の判読に集中できます。
調査後に再撮影
チョーキング完了後、再度ドローン撮影を実施します。この撮影によって、変状位置がマーキングされた状態の3Dモデルを再構築します。
CAD上で高精度な損傷図を作成
再構築したモデルから、再びオルソモザイク画像を生成します。
CADへ位置合わせしたオルソ画像を背景として、チョーキング位置をそのままトレースすることで、
- 位置ズレ
- 記載漏れ
- スケッチ誤差
を大幅に低減できます。さらに旗揚げ(注記)を追加することで、詳細点検調書(損傷図)を効率よく作成できます。
点群だけではなく3Dメッシュが有効
SfMでは点群だけでなく、高解像度テクスチャを貼り付けた3Dメッシュも生成できます。
点群では把握しにくい
- 植生に隠れた場所
- クラック
- 漏水跡
- コンクリート表面の変色
- 苔の付着状況
なども視覚的に確認しやすく、現場でタブレットを用いて任意方向から確認できるため、調査補助ツールとしても有効です。
きぃすとんのロープアクセス技術との組み合わせ
本手法は、ロープアクセスによる近接目視調査との親和性が高い点も特徴です。
事前に3Dモデルを構築しておくことで、
調査員は
- 損傷位置
- 接近ルート
- 必要な調査範囲
を事前に把握できるため、調査効率を高めることができます。
さらに調査後は、チョーキング済みモデルを利用して損傷図を効率的に作成できるため、現場・内業の双方で作業時間を短縮できます。
今後の展望
きぃすとんは、SfM/MVS技術を単なる3Dモデル作成技術としてだけではなく、「調査」「記録」「図面化」を一連のワークフローとして効率化するための基盤技術として活用します。
ロープアクセス技術による近接調査と組み合わせることで、現場作業の効率化だけでなく、損傷図作成の品質向上や再現性の確保にも大きく貢献します。
こうしたデジタル技術を積極的に取り入れ、砂防堰堤・岩壁・斜面などのインフラ点検において、より安全で高精度な調査を実現しています。