ロープ技術やロープアクセス技術における墜落事故の多くは、「ゼロ点墜落」と呼ばれる状態で発生しています。
「ゼロ点墜落」とは、ロープユーザーが支持確保点をまったく持たない、いわば丸腰の状態で墜落してしまうことを指します。
ロープ技術/ロープアクセス技術では、本来、ロープユーザーが墜落しないように必ず安全確保が行われます。その基本となる考え方が、「2本確保」または「2点確保」です。
「2本確保」とは、メインロープとライフラインの2本のロープによって安全を確保する方法で、広く普及しているロープアクセス技術における安全確保の大原則です。
一方、「2点確保」は、三次元ロープアクセス技術である【SORAT技術】における安全確保の大原則です。ロープユーザーが常に最低2点で支持される状態を維持することで、墜落を防ぎます。
専門的な言い方をすれば、集合論的には「2本確保」は「2点確保」に含まれる概念です。
いずれの場合も、1本(1点)の支持が失われたとしても、もう1本(1点)が残ることで墜落を防ぐという考え方で成り立っています。いわゆるフェイルセーフの思想です。
ところが実際の事故例を見てみると、このフェイルセーフの範囲外で事故が発生しているケースが少なくありません。つまり、2本(2点)どころか、1本(1点)の支持すら確保していない状態で作業を行い、そのまま墜落してしまうケースです。これが「ゼロ点墜落」です。
また、クランプ、フック、ビームスライダーなどの器具の誤用による事故も見られます。これらの器具は、構造上、支持点として成立するものではありません。しかし、その基本的な前提が十分に理解されないまま使用されているケースもあるようです。
海外の映像などで、ビームスライダーのみでぶら下がって作業しているように見える場面が紹介されることがありますが、そのような使い方は安全確保の原則に反するものであり、絶対に真似してはいけません。
ロープ技術において最も重要なのは、「常に支持点を確保する」という基本原則です。2本確保、または2点確保という安全思想は、そのために存在しています。事故の多くは高度な技術の失敗ではなく、この基本原則が守られていない「ゼロ点状態」で発生しているのです。